遺贈と相続の違い 公序良俗

不倫相手に全てを遺贈というのは納得いかない

先日、父が亡くなりました。

相続人は、私と私の母です。

父は、事業に成功して金銭的には豊かでしたが、

10年間に渡ってA子という愛人と半同棲状態を続け、

私の母はさんざん泣かされました。

このたび父の机の引き出しを整理すると、

「遺産は全てA子に遺贈する」という内容の遺言書が出てきました。

父とA子との不倫関係や財産関係を調査し、

遺贈が不倫関係の維持継続を

目的としたものであるかを確認する

解説 ~不倫関係の維持継続を目的とする遺贈の有効性は?~

相続と関係する制度として、「遺贈」という制度が用意されています。

「遺贈」とは、遺言によって自らの財産を無償で他人に与えることをいいます。

遺言によって被相続人の財産の行方を指定する制度として、

遺産分割方法の指定・相続分の指定と非常によく似た機能をそなえていることが特徴です。

 

しかし両者は、以下の点で違いがあります。

遺産分割方法の指定・相続分の指定は相手方が相続人に限定されますが、

遺贈は財産を受け継ぐ相手方は相続人に限られません。

また、登記手続の点では、

遺産分割方法の指定の場合は単独申請で移転登記が可能とされていることが現在の登記実務ですが、

遺贈の場合は登記義務者である相続人との共同申請となります。

 

さらには、登録免許税の点では遺贈は贈与扱いになりますが、

遺産分割方法の指定では相続扱いとなるため、後者は登録免許税が安く済みます。

 

遺贈の内容や相手方は自由に決められるのが原則ですが、

無制限に認められるわけではありません。

 

遺贈も法律行為であるため、公序良俗に反する遺贈は無効です。

特に問題になるのは、婚姻外の愛人に対する遺贈です。

裁判例では、不倫関係の維持継続を目的とする遺贈は無効であるが、

愛人の生活を保持する目的のものであれば無効ではないとしています。

さらに、公序良俗に反するかの判断要素として、

愛人に遺贈されることで、相続人の生活を脅かすほどのものかどうかも考慮しています。

 

また相続制度は、

遺族の生活保障や潜在的持ち分の清算という機能も持っているため、

遺留分制度が設けられています。

遺留分を超えた遺贈は、遺留分減殺請求の対象になります。

 

事例では、A子の生活状況や相談者、母の生活状況などが明かでないため断定はできませんが、

遺産をすべて遺贈するという内容は、公序良俗に反するとされる可能性があります。

また、仮に遺贈が有効だったとしても、

私と私の母は、遺留分減殺請求をすることができます。