私の父が亡くなりました。
相続人は、三男である私と、私の兄2人です。
父の机の中から、父が亡くなる半年前に書かれた遺言書が出てきました。
そこには、遺産の土地は私にすべて相続させると記載されていました。
しかし一番上の兄は、これとは別の遺言書を持っていました。
そこには、遺産の土地は一番上の兄にすべて相続させると記載されていました。
二番目の兄が言うには、
その遺言書は、3年前に一番上の兄が父を脅して無理矢理書かせたものだそうです。
半年前に書かれた遺言書によって
3年前の遺言が撤回されていて、
半年前のものが有効と主張する。
遺言は、遺言者の最終の意思を尊重するため、
遺言者は、いつでも遺言の全部または一部を撤回できるとされています。
ただし、撤回の意思や範囲を明確にして後の争いを防ぐ為に、
遺言の撤回も、遺言で行わなければなりません。
これは前になされた遺言の方式と異なる方式でなされても構いません。
遺言の撤回行為をさらに撤回することもできますが、
一旦撤回された遺言は復活しないことが原則です。
たとえば、最初になされた遺言(第1の遺言)を撤回する遺言(第2の遺言)を作成し、
さらに第2の遺言を撤回する遺言(第3の遺言)を作成しても、
第1の遺言は原則として復活しません。
ただし、遺言書の記載に照らして、
遺言者の意思が第1の遺言の復活を希望することが明らかなときは、
第1の遺言の効力が復活するとされています。
事例では、半年前の遺言が遺言として要件を満たしている限り、
3年前の遺言は撤回されています。
したがって、3年前の遺言は強迫によってなされた疑いがありますが、
取り消しを行使する必要はありません。
結局のところ、半年前の遺言にしたがって、遺産分割をすることになります。
遺言を撤回する権利をあらかじめ放棄することはできません。
たとえば「この遺言は絶対に撤回しない」と遺言に記載しても無意味です。
遺言の目的は遺言者の最終意思を尊重することにあり、
遺言者が撤回したくない場合は亡くなるまで撤回しなければよいだけであって、
あらかじめ撤回権を放棄して後の心変わりを認めないとしても無効になります。