遺言と矛盾行為(遺言の撤回)

「土地を返せ」と言われても困る

私は5年前に、有利な条件で親しい友人から不動産を購入しました。

しかし、その友人が先日亡くなり、友人の長男から

「その不動産は先祖伝来の土地建物であり、

私に相続させる旨の遺言がある」と言われました。

聞くと私が購入する以前に書かれた遺言のようなのですが、

まるで私が騙し取ったかのような抗議を受け、不動産を返せと主張されています。

 

遺言は撤回されたとみなされる旨を主張する。

 

解説 ~遺言内容と抵触する生前処分等がなされた場合は?~

遺言は遺言者の最終意思を尊重する為の制度なため、

遺言をした後に、それに矛盾・抵触するような行為をしていた場合、従前の遺言は撤回されたとみなします。

矛盾行為をするほどなため、遺言者は遺言を撤回したかったと考える訳です。

 

もっとも、生前行為が矛盾行為に該当するかを巡って、しばしば争いとなります。

たとえば、土地を遺贈する旨の遺言をした後に、ほかの者に対して大学に合格したらその土地を贈与すると約束し、

まもなく遺言者が死亡した場合が挙げられます。

この場合、遺言者の死亡の段階では条件が成就していないため、遺贈が効力を生じます。

しかしその後、大学に合格すると、贈与が効力を生じるので、遺言は撤回されたことになります。

一方、大学に合格しないことが確定すると、贈与契約は効力を生じないため、遺贈の効力は有効なままとなります。

また、形式的には矛盾・抵触とならない場合であっても、

実質的にみて矛盾・抵触となる場合は、遺言の撤回が認められます。

 

裁判例では、終生扶養をしてもらう代わりに遺産の大半を遺贈する約束で養子縁組をした者が

その旨の遺言を作成したが、その後、不和となって協議離縁した事案で、

後の生前処分が前の遺言と両立しない趣旨のもとにされたことが明らかである場合も

矛盾・抵触行為に該当するとして、上記遺言は撤回されたと認めたものがあります。

事例では、明らかに、父の処分行為は遺言と矛盾・抵触しているため、遺言は撤回されたものとみなされます。

遺言内容の解釈 

遺言は、厳格な形式が定められていて、それを満たさないものは無効とされます。

しかし、有効に成立した遺言の解釈において裁判例は、

書面に現れない事情もある程度考慮した柔軟な解釈態度を採用しています。

たとえば、遺言執行者を指定して、「遺産を公共に寄付する」という内容の遺言をした事案において、

国や地方公共団体、公益法人、学校法人などを受遺者とする遺贈であり、

遺言執行者に受遺者の選定を委ねる趣旨を含むものとして有効な遺言であるとしたものがあります。