複数の解釈が可能な遺言書

実子ではないが遺産は欲しい

父が亡くなりましたが、戸籍上の子は私だけです。

ただし、私は母が戸籍上の父以外の男性との間にもうけた子であり、

それを実子として届けたものです。

さらには遺言があり、

「遺産は法的な相続人に与える」とありました。

やはり遺産は、父の兄弟に与えられるのでしょうか。

文言を形式的に解釈するだけではなく、

遺言書作成当時の事情を考慮して

内容を確定する。

解説 ~遺言書の意味が明らかでない場合はどうするか~

公正証書遺言であれば、公証人のチェックが入るため、

内容の分かりにくい条項はその時点で比較的排除できますが、

それでも、どう理解してよいのか迷う場合が少なくありません。

自筆証書遺言であれば、

意味が一義的に理解できない条項が入っているケースはさらに多くなります。

 

ただ、一見して理解できないという理由で即座に無効とするのは、

せっかくその条項を入れた被相続人の意思を無視することになるため、

可能な限り、有効・実現可能となるように解釈しなければなりません。

 

また、遺言の解釈にあたっては、

遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、

遺言者の真意を探求すべきであり、

遺言書が複数の条項から成る場合に、

そのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、

単に遺言書の中からその条項のみを他から切り離して抽出し、

文言を形式的に解釈するだけでは充分ではなく、

「遺言書の全記載との関連」、

「遺言書作成当時の事情及び、遺言者の置かれていた状況」などを考慮して、

遺言者の真意を探求し、条項の趣旨を確定すべきです。

 

事例の場合では、子は、「法的な相続人」ではないため、

遺言をそのまま読めば、あなたには相続させないと記載したと読めます。

実は、父はそれまでは実子として扱っていましたが、

内心では実の子ではないため疎んじていたかもしれません。

 

しかし、「法的」とは「戸籍にしたがって」という意味にもとれます。

それまでの振る舞いや、あなたが父の面倒をどれだけ見たかによっては、

あなたに相続させたかったのかもしれない、と解釈することが出来ます。

今回のケースの1つの終着点 

この様な事例において裁判例は、

子がいなかったためわざわざもらい受けて実子として届け出たことや、

実の親子同様の生活をずっとしてきていたこと(遺言書を書いた当時を含めて)から、

遺言書の意味は遺贈(実子ではないため「相続」はできない。)であると解釈されました。