賃借権の相続

嫌がらせのための賃料請求には屈したくない

私は父と同居していましたが、父が昨年亡くなりました。

私は引き続き父の家に住みながら、

ほかの兄弟2人とずっと遺産分割の話をしていますが、

話がまとまらず、ほかの2人が私に家賃相当分の請求書を送ってきました。

こう対処せよ

生前から被相続人である父から

「無償で住んでよい」と言われていたとして、

使用貸借権があると主張する。

遺産である不動産に住み続けるのに賃料は必要か ?

長男とほかの兄弟2人は共同相続人であり、遺言がなく父の配偶者を考えなければ、法定相続分としては、

それぞれが3分の1ずつの持分となります。それにもかかわらず、長男が1人で住み続けてしまうと、

ほかの兄弟2人の持分が無視されることになります。

 

しかし、長男がなぜ、父の生前に父の家に無償で住むことができていたのかというと、

たとえ契約書がなくても法律的には、父と長男との間に使用貸借(無償で利用できる権限を与える)契約が

結ばれていたからです。

そして使用貸借は人的信頼関係に基礎をおく(貸主の借主に対する個人的好意に基づく)無償の貸借契約であるため

借主が死亡した場合は、その借主としての地位は相続されず使用貸借は終了しますが、

貸主が死亡した場合、貸主の地位は相続されます。

 

ところで、民法上の使用貸借の終了原因は、

 

1. 契約上貸借期間が定められている場合は期間の経過

2. 使用目的が定められている場合は目的の終了

3. 期間も目的も定められていない場合は、貸主の返還請求

 

となっています。通常は、期間も目的も明確には定めていない場合が多いでしょうが、

「結婚するまでは家に住んでよい」とか、「一緒に商売をやっている間は同居すること」などと

定めてある場合もなくはありません。きちっと形の整った契約書でなくても、期間や目的が示せるメモなどがあれば、

それに基づき一定期間の居住権を主張することができます。

それでは、期間も目的も定めていなかった場合にはどうなるのかというと、その場合でも、

いきなり使用貸借が終了することはありません。

事例の場合の「一定期間の居住権」とは

亡き父が長男に使用貸借した趣旨は、いくらなんでも、自分が死亡したらすぐに家を退去しろ、

といったものではないはずのため、少なくとも遺産分割が終了するまでは無償で住んでよいという

合理的な意思が推認できます。

そのため、遺産分割が終了するまでは、引き続き賃料なしで住み続けることが可能です。