私の父が亡くなりましたが、弟は父からかなり借金をしていました。
逆に、私は、父に相当お金を貸していました。
弟はのらりくらりとして借金をうやむやにしようとしていますが、
この場合、弟の借金や私の貸金は、相続によってどうなってしまうのでしょうか?
弟に対して、父からの借金及び
父に対する貸付金を返済するように請求する。
まず、弟の借金は、父が弟に貸金債権を有していて、
この貸金債権が相続によって、弟と兄に相続されたということになります。
そして、可分債権(金銭債権など)は相続開始により法定相続分にしたがい分割されます。
したがって、たとえば、父から弟への貸金が1000万円だったとすると、
500万円ずつ弟への貸金債権が兄と弟それぞれに相続されるため、
兄は弟に対して500万円の債権者となります。
弟は、自分がもともと債務者(借主)であったにもかかわらず、
父の債権者(貸主)の立場を相続してしまったため、
債務者でもあり、債権者でもあるというおかしなことになってしまいます。
このように、何かの事情で債権と債務が同一人に帰した場合には
民法上、債権・債務は消滅するとされていて、このことを「混同」と言います。
兄の貸金も弟の場合と同様に考えることが可能です。
父の債務者(借主)の地位が、相続によって弟と兄に分割されて承継されます。
たとえば、兄が父に1000万円貸し付けていたとすると、
500万円の債務が弟に承継されるため、兄は(父に代わって)弟に借金を返すよう請求できます。
また、兄は、もともとは債権者(貸主)ですが、
父の債務者(借主)としての地位を相続により承継されるため、
債権と債務が同一人に帰すことになり、
やはり「混同」によって債権は消滅します。
事例において、仮に、父の財産が弟に対する貸付金以外には何も存在しないとします。
すると弟は、父の(兄からの)借金を相続することを嫌って、相続放棄するでしょう。
その場合、兄は、父に代わって借金の返済を請求することはできなくなりますが、
兄が相続する限り、父に対する貸金の請求は(弟の相続放棄に関係なく)弟にすることができます。