父が亡くなりましたが、父の遺産の1つにアパートがありました。
3年ほどして遺産分割がまとまり、
アパート自体は兄の取得するところとなりましたが、
遺産分割がまとまるまでの賃料も兄のものだと言われています。
相続開始時から遺産分割までの間の
アパートの賃料については
法定相続分にしたがって請求する。
遺産分割の対象となるのは、相続開始(父の死亡)時点における父の遺産です。
したがって、たとえば、父の死亡までにどこかの銀行口座にアパートの賃料が貯まっていれば、
その賃料は、銀行預金債権として父の遺産となり、
アパートの居住人が賃料を不払いにしていて、
父の生前から支払おうとしなかった場合には、
賃料請求権として父の遺産に帰属するため遺産分割の対象となります。
それでは、上記のような父の生前の財産ではなく、
父の死後、すなわち、相続開始後に発生した賃料についてはどのように考えればよいのでしょうか。
この点については、実際に裁判で争われたことがあり、
一、二審では、遺産分割の効力とは相続開始時にさかのぼるため、
後日、遺産分割により、物件を取得した者がその賃料を取得するのだと判断されました。
たしかに、遺産分割の効力は、相続開始時点にさかのぼります。
そうすると、遺産分割により賃貸物件を取得すれば、
相続開始時点からずっと物件を所有していたことになるため、
賃料も物件取得者に(本来は)入っていたはずです。
しかし、最高裁は、
「共同相続財産たる不動産の賃料は、
遺産とは別個の財産で各相続人が相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する」
「この確定的に取得した賃料債権は、後の遺産分割には影響されない」と判断して、
結局、遺産分割が最終的にどのようになされようとも、
遺産分割がなされるまでの賃料は、
相続人各人がそれぞれ法定相続分にしたがってもらうことと判断しました。
賃貸物件が相続の対象となると、
借りている側は、遺産分割がなされるまでの間、
賃料をいったい誰に支払えばよいのか困ってしまいます。
実務上は、法定相続人全員が同意した振り込み口座を指定し、
そこに振り込んでもらうことがよくありますが、
それすらできないほど 相続人たちが険悪な場合には、供託することになります。