無権代理人の相続

父が勝手に売った家を取り戻したい

父が亡くなりましたが、父は昔から浪費癖がひどく、

なんと生前に子である私名義の不動産を、

私の印鑑やその他登記に必要な書類を無断で持ち出し、

私の代理人であると称して、第三者に売却していました。

あくまで自分は、無権代理行為をしたわけではなく、

本人であるとして追認を拒絶する。

相続された無権代理人としての地位はどうなるのか?

父は大変悪い奴ですが、既に死亡してしまったため、父の悪さをなじっても仕方がありません。

問題は、代理権限もないのに勝手に不動産を処分してしまった父の行為(これを「無権代理行為」と言います)が

相続によってどのように扱われるのかです。

 

一般には、無権代理行為がなされても、本人が何ら関与していないため、無権代理行為について本人が追認

(後で本人が無権代理行為に承認を与えること)しない限りは無権代理行為が有効になることはありません。

しかし、相続によって無権代理人と本人それぞれの立場が同一人に属するようになった場合、

その人は追認を拒絶することができるのでしょうか。

 

このように無権代理人と本人との地位が相続によって同じ人に帰属した場合の考え方としては、当然に、

両方の地位が融合して、無権代理行為が有効になるものもありますが、勝手に不動産を処分されてしまい、

それが相続という偶然の事情によって有効になってしまうのではあまりに本人が気の毒です。

このような場合には、本人としての地位(追認しないと言える地位)と無権代理人としての地位とが併存し、

本人の地位に基づいて追認を拒絶できると考えられています。

 

なお、事例とは逆の場合で、たとえば、子が死亡して、無権代理をした父が相続をした場合には、

追認を拒絶することはできません。自ら無権代理行為をしておきながら、本人(子)としての立場で、

追認を拒否するのはあまりに信義に反するためです。

この場合も、無権代理人の地位と本人の地位が当然に融合すると考えるのではなく、

あくまで両方の地位が併存しているが、信義則の観点から、本人の地位に基づく追認拒絶はできないと考えます。

無権代理と表見代理

無権代理とは、本人にその責任が及ばないことが大原則ですが、

取引の相手方が、無権代理人を真実の代理人だと誤信したことについて、

何らかの正当な理由がある場合

(たとえば、無権代理人に何らかの代理権を与えたような書類を発行するなど)には、

その取引は有効なものとされることがあります(表見代理)