母の死後、姉が遺産(不動産と現預金)を
2分の1ずつとする分割協議書を持ってきました(相続人は姉と私の2人です)。
姉が遺言はないというので、それを信じて協議書に署名したのですが、
実は不動産はすべて私に相続させる旨の遺言があることがわかりました。
取り消しまたは無効を主張し、姉が不動産の持分を
他人に譲渡する危険がある場合には
処分を禁止する仮処分の申立てを検討する
騙されたり強迫されたりして遺産分割協議に合意した場合や、
重大な思い違いをしていたような場合には、詐欺・強迫に基づき遺産分割協議を取り消したり、
「錯誤(間違い、誤り)」による無効を主張したりすることが可能です。
事例の場合、まず姉が、母の遺言の存在やその内容を知っていたにもかかわらず、
自分がより多く財産を相続するためにわざと「遺言はない」と嘘をついた場合には、
詐欺だとして遺産分割合意の意思表示を取り消すことができます。
ただしこの場合、騙されたことを知って「取り消すことができるようになった」ときから5年経過したとき、
または遺産分割に合意したとき(遺産分割協議書を作ったとき)から20年経過したときは、
取り消しができなくなるため注意が必要です。
さらに、姉が相続した財産を何も事情を知らない第三者に譲渡していたような場合には、
遺産分割を取り消しても第三者からその財産を取り返すことはできないため、
損害賠償請求を検討するしかないでしょう。
次に、錯誤の主張も可能です。
この場合取り消しと異なり、期間の制限はないですが、
遺言があるのにないと信じたことに重過失があると判断されると無効主張が認められません。
つまり、遺言があると簡単にわかったはずなのに、ないと軽々しく信じてしまったような事情があると、
遺産分割協議の無効主張は難しいでしょう。
いずれにしても重要なことは、姉が財産を処分する危険があるかどうかを検討し、
その危険がある場合には処分を禁止する仮処分の申立てという手を打っておくことです。
このような事例では裁判で争うことになる可能性が高いでしょうし、
姉が財産を処分しようとしている場合には時間との戦いにもなります。
また裁判になった場合、詐欺や錯誤は立証も簡単ではないため、早めに弁護士に相談しましょう。