相続分なき証明書

「相続分なき証明書」に判を押したくない

父が亡くなりましたが、相続人は兄と私の2人です。

兄は私に対し、「登記を急ぐので、遺産分割は改めて行うから、

とりあえず「相続分なき証明書」に印を押してくれ」と言われています。

私は「相続分なき証明書」とは何かと兄に尋ねたところ、

「相続分なき証明書」は遺産分割とは全く違うのだから、

それを交付しても特に問題はないのだと言われているのですが、

どうしたらいいでしょうか?

こう対処せよ

「相続分なき証明書」の内容が虚偽であっても、

それを提出した場合には、その内容に従った

遺産分割協議が成立したと判断されかねないため、

「相続分なき証明書」の提出は断固拒絶する。

相続分なき証明書の交付は遺産分割と無関係か?

たしかに「相続分なき証明書」は、遺産分割協議書とは異なります。

そして「相続分なき証明書」を交付したからといって、

その「相続分なき証明書」が虚偽の事実の場合であれば、

それは無効の「相続分なき証明書」となり、何ら法的効果ももちません。

当然、無効の「相続分なき証明書」を添付して登記を行っても、

それは無効な登記であるという考え方をすることができます。

 

しかしそのように考えると、一旦は真実に反する「相続分なき証明書」を交付しておきながら、

後日これをくつがえすことができることになり、遺産を巡る争いをより複雑にして、問題の長期化に発展します。

また、不動産が転売された場合では、後日、無効を主張されると転売先に迷惑がかかるでしょう。

 

そこで裁判例では、「相続分なき証明書」を提出して登記を行った場合は、

特別受益に該当する贈与がなくても、錯誤(勘違い)を理由として、

遺産分割協議の効力を否定することはできない、としています。

つまり、相続人が真『意』に基づいて、真『実』に反する「相続分なき証明書」を作成交付した場合には、

それによって、ほかの相続人に相続財産を取得させ、

自己の取得分をゼロとする分割協議の意思が表示されたものとみるべきだ、とされているのです。

「相続分なき証明書」と相続放棄の違い

相続分なき証明書は、相続放棄に比べて、家庭裁判所の審判が不要で手続が簡単であり、

また熟慮期間を経過してからでも利用できる利点があります。

しかし、上記のように後に相続人間で争いが生じやすく、また被相続人に債務があった場合、

債権者の同意がない限り、法定相続分に相当する割合の分割債務を免れることはできません。

実際の具体的事案にしたがって、どちらの方法を採るかを選択することになります。