農業で生計を立てていた父が亡くなりました。
母は既に亡くなっていて、相続人は私(三男)と2人の兄だけです。
2人の兄は上京してサラリーマンをしていて、
私1人が地元に残って、父と共に農業をしてきました。
兄に対し、自分が家業を継いだために
どれくらい相続財産が増加したかを説明し、寄与分を主張する。
寄与分の制度は、相続人の貢献によって被相続人の財産が増加したり、あるいは減少せずに済んだりした場合に、
その貢献を金銭的に評価して相続分に反映させ、貢献した相続人とそうでない相続人との間の公平を図る制度です。
事例では、まず三男が農業をしてきたことによって、父親の財産が増加したといえるかが問題になります。
たとえば、家業を手伝う見返りに父親が三男の生活費を負担していた場合や、
報酬(賃金)を支払っていた場合などは、父親の財産が増加したとは言えない可能性もあります。
次に、通常の寄与ではなく「特別の寄与」に該当するかが問題となります。
たとえば、三男が独立するまで実家に同居して家業の農業を手伝うことは、
農業を営む家に生まれた子として通常のことと考えられ、特別の寄与とは評価されない場合があります。
具体的な計算方法ですが、父親の残した財産が1000万円、
三男の貢献により増加した財産がそのうち100万円であったとすると、
三男の寄与分が100万円になるため、まずこの100万円を除いておき、
残りの900万円を3人の兄弟で法定相続分にしたがって(兄弟間では平等に)分けることになります。
そして、2人の兄はそれぞれ300万円ずつを相続し、
三男は300万円に寄与分100万円を加えた400万円を相続できることになります。
なお、農業を承継することは、むしろ負担を背負い込むことというイメージを持ち、
「これから苦労する分についてはどうなるのか」と疑問に思われるかもしれませんが、
寄与分というのはあくまで過去の農業に従事した分を精算する制度ですから、
将来のことについては請求できません。
一般に、家業が農業の場合、後継者として長年父親と共に農業に従事してきた場合には、
寄与分が認められやすいでしょう。
寄与分の算定にあたっては、農業に従事してきた期間や被相続人との身分関係、
家業従事に至る経緯や従事の態様など、さまざまな事情が考慮されます。