母の遺産の中に郊外の土地があります。
この土地のそばに新駅を建設する計画が持ち上がっているそうで、
計画が決まれば土地が値上がりするのは確実です。
そのため今遺産分割せずに、しばらく様子を見てからにしたいのですが。
相続人全員がしばらく様子を見ることに同意しているなら、
その土地について分割禁止の合意をする。
相続開始と同時に、遺産たる不動産はすべて相続人の共有となります。
そして、各相続人は、いつでも遺産の分割を請求できますが、
たとえばその土地で長い間商店を営んでいるような場合には、
相続人の1人から分割請求がなされると営業が継続できなくなる、といった
不都合が生じる場合もあるはずです。
相続人の協議で、分割せずに済むような遺産分割案が合意できればよいのですが、
それが難しい場合には、相続人全員の合意により、5年以内の期間であれば、
「分割禁止」の契約を締結することができます。
5年以内という制限があるのは、分割禁止の契約をすることによって、各共有者は、
共有持分という所有権を有しているにもかかわらず好きなときに処分できないことになるため、
遅くとも5年後には自由に処分できるようにするためです。
事例でも、相続人の全員がその土地をしばらく分割したくない、という意向を持っている場合は、
「新駅建設の計画の実現性が明らかになるときまで」と期間を区切ったうえで、
分割禁止の合意をすることができるでしょう。
万一、5年以内に実現するかどうか判明しなかった場合には、相続人全員が合意すれば、
分割禁止の契約を5年以内で更新することも可能です。
一方、相続人の1人が分割禁止に同意せず、協議がまとまらない場合には、
遺産分割の審判を申し立てることになります。特別の事由があると認められれば、
家庭裁判所が一部の遺産について分割を禁止することがあります。
しかし、値上がりする可能性があるという理由では、特別の事由があるとは認められにくいでしょう。
相続人の1人が未成年で、5年以内に成人するような場合にも、
成人するまでの間、分割禁止を活用できます。
また、ある土地建物で長年事業を営んでいる場合のように、特定の財産について、
死後に分割されると困ることがあらかじめ予想される場合には、遺言によって分割を禁止できます。