父が先日亡くなり、私は不動産を、
弟は現金を相続する話をしていました。 (※不動産の方が高い)
父には借金があり、その債権者から返済を迫られ、
弟は「兄貴は多く相続するのだから借金は背負え」と言っています。
借金の2分の1(法定相続分)だけを支払い、
債権者にほかの2分の1については弟に請求するように主張する。
相続というと、プラスの財産のみを承継するようなイメージを持っている人がいますが、
借金、つまり債務も相続の対象となります。
そして、債務については相続開始と共に当然、共同相続人間で分割され、
各共同相続人は、その法定相続分に応じた割合で債務を負担するに至ると解されています。
したがって、相続債務については、各共同相続人は遺産分割の実際にもらえる割合に関係なく、
それぞれの法定相続分に応じて債務を負担します。
しかし、たとえば実家が農業をやっていて、長男がこれを受け継ぐ場合、
「農業に関して生じた借金をほかの相続人が支払わなければならない」というのは、
ほかの相続人にとってメリットのある話ではありません。
また、ローンで建築されたアパートを次男がもらい、賃料は次男のものになる場合、
ほかの相続人としては賃料から支払ってもらいたいでしょう。
そこで、このようなケースでは、遺産分割において、
農地や農業施設は長男に取得させるが、それに関する借金も長男が背負うとか、
アパートは次男に譲るがそのローンは次男がかぶるといった具合に相続人間で定めます。
また、遺産分割において、「自分は財産をもらうが、借金は負わない」と定めることは可能ですが、そのような身勝手な言い分を他の相続人が認めてくれるはずもありません。
しかし、債権者に対して、
「借金は長男(次男)が負うことになったからそちらに請求してくれ」と言ってもそれは通じません。
ただ、相続人内部で決めておけば、
自分が借金を払った後に、長男(次男)に求償することが可能となります。
なお住宅ローンの場合には、当然抵当権がついているでしょうから、
ローンの返済が滞った場合には、その住宅が競売されるなどして、
返済に充てられるため、ローン付き住宅を取得することは残債務にもよりますが、あまり得ではありません。
相続の債務を、特定の相続人に負わせることを債権者に対しては主張できない、と言いましたが、
逆に言えば、債権者の承諾があれば、相続の債務を特定の相続人に負わせることが可能です。
金融機関などは応じてくれない可能性が高いですが、債務を引き受ける相続人の資力次第では、
そのほうが債権者にとって有利なことも考えられるため、まずは交渉してみましょう。