相続放棄の取消

騙されて相続放棄したが遺産は欲しい

私の父が亡くなりましたが、私は同居しておらず、

同居していた兄から「父の財産は何もない」「借金があるようだ」と言われたため、

慌てて相続放棄をしましたが、

実はかなり預金があることが後からわかりました。

こう対処せよ

詐欺や脅迫、錯誤などによってなされた場合には、

それを取り消し、または無効とすることができる。

解説  ~一度してしまった相続放棄を取り消せるか?~

相続放棄(相続を受ける権利を放棄すること)をすると、その効果として、

「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかった」ものとみなされます。

そして、一旦相続放棄がなされれば、ほかの相続人は、そのことを前提として遺産分割をするため、

後から相続放棄を撤回できることを認めると、著しく法的安定性を害することになります。

そこで、相続放棄は撤回することができない、とされています。

 

しかし、事例のように、兄から間違った情報を伝えられたことによって(意図的かどうかはわかりませんが)

放棄してしまった者が何ら救済されないのでは、あまりにその者に気の毒ですし、

兄に不当な利得を与えてしまいます。

そこで、相続放棄をした場合であっても、いわゆる詐欺や脅迫、錯誤(間違いや誤りのこと)などによって

なされた場合には、それを取消し、または無効とされているのです。

 

取消しのできる期間は、騙されたとわかったとき(または脅迫状態を免れたとき)から6ヶ月間です。

この間に行使しないときは、時効によって取り消しの権利が消滅してしまいます。

また、放棄のときから10年を経過したときも同様です。

取消しの手続きは、相続の放棄を取り消す旨を家庭裁判所に申述しなければなりません。

相続放棄の取り消しは、前述のように法的安定性を害するおそれがある行為であり、

裁判所としてもその受理は慎重にならざるをえず、なぜ、取り消すことになったかについて

審尋(口頭での質問)がなされます。

「相続取り消し」は確定事項ではない

以上のような、裁判所における審尋を経て、相続放棄の取り消しが受理されたとしても、

それで安心というわけではありません。

裁判所の相続放棄の取り消しの受理というのは、

法的に相続放棄の取り消しを確定させる効果があるわけではないため、

後日、ほかの相続人などが相続放棄の取り消しの効果を争ってきた場合には、

裁判によってその有効・無効が確定されることになります。