私は結婚して実家を出ましたが
兄は結婚後も実家に残り、父が亡くなるまで同居をしました。
私は、父の容態が悪くなって以後、兄嫁以上に看病をしてきましたが、
兄嫁から「あなたは家を出た人」だと言われています。
兄が同居した点については多少顧慮しつつも
堂々と法定相続分について主張する。
戦前は、「家督制度」ないしは「家督相続」という制度がありました。
家の主である戸主は、家族に対する統制権を有し、戸主の地位は常に家の財産一式と共に
常に単独相続(長男男子が原則)されていました。
今でも、この家督相続的な発想をする人がたまにいて、特に実家に引き続き残った長男はほかの兄弟に対して、
「お前は家を出ていった者だ」「俺が家を継いだ」などと言う人がいます。
たしかに、遺産をめぐる争いには過酷な側面があり、上記のような家督制度があれば、
このような過酷な争いをしないで済むのは間違いありません。
また、戸主は権限も持ちましたが、一方でほかの家族の扶養義務を負うことにより、
家全体の面倒を見るなどの立場も持っていました。
しかし、戸主は家の中における主君として、ほかの家族の婚姻についての拒否権を持つなど、
家督制度は平等原則を旨とする新憲法体制にはおよそなじまないものであったため、
現在の法定相続制度に改正されました。
事例では、兄が兄嫁と結婚後も実家に残り、2人は父と同居をしてきたとのことですが、
実家に残り同居するだけでは、相続分が増加することはありません。
ただし、寄与分について考慮する必要があります。
まず、兄嫁自身については、相続人ではないため寄与分は認められません。
次に、兄自身が被相続人の財産の維持増加に何らかの寄与をしていれば
その分は多く相続できる可能性があります。
寄与分制度とは、被相続人の財産の維持または増加につき特別の寄与をした相続人に、
遺産分割にあたり、法定または指定相続分を越えて寄与相当の財産額を取得させることにより、
共同相続人間の平等を図ろうとするものです、共同相続人間の平等を図る見地から、
相続人の配偶者の寄与が相続人の寄与と同視できる場合には、
相続人の寄与分として考慮されることもあります。