父の認知症が非常に悪化したため、申立てにより成年被後見人となりました。
成年後見人には、私の兄がなりました。
しかし兄は、父のお金を大量に自分のために費消しています。
何とかやめさせる方法はないでしょうか。
家庭裁判所は、成年被後見人もしくは
親族や後見監督人の請求、または職権によって、
後見人を解任できる。解任請求をする。
成年後見人は、本人である成年被後見人に対して、善管注意義務を負っています。
また成年後見人は、成年被後見人の財産を管理し、身上に配慮する義務を負担しています。
これに反していた場合には、当然ながら、その責任を追及されることになります。
追及の方法としては、まずは、成年後見人の解任請求が挙げられます。
成年被後見人もしくはその親族、成年後見監督人などは、
家庭裁判所に対して、後見人の解任を請求することが可能です。
親族などは、後見監督人に後見事務や財産状況の調査をしてもらえるため、
これにより成年後見人の責任を明らかにできます。
次に、成年後見人が故意または過失によって違法に成年被後見人の権利を侵害したような場合、
成年被後見人は、後見人に対し、不法行為に基づく損害賠償請求をすることが可能です。
裁判例においても、禁治産後見人が不当に低い価格で不動産を売却した事案で、
後見人の不法行為による損害賠償責任が認められています。
最後に、成年後見人の行為が背任罪や横領罪の構成要件に該当する場合、
成年後見人の刑事責任を追及する方法もあります。
ただし、親族が成年後見人になっている場合には、刑の免除規定が適用される場合があるため注意しましょう。
これは親族相盗例(しんぞくそうとうれい)と言い、親族間で発生した一部の犯罪行為については、
その刑罰を免除するもので、「法律は家庭に入らず」という考え方に基づくものです。
なお、成年後見人の「善管注意義務」とは「善良な管理者としての注意義務」の略で
一定のある行為において、その人の職業や社会的地位などから考えて
一般的・客観的に要求される程度の注意をしなければならないという注意義務のことを言います。
これと似た言葉として、「自己のためにすると同一の注意義務」がありますが、
これは文字通り、自分の財産と同じ程度の注意を払えば足りるという注意義務です。
上記の親族間での刑の免除規定について、最近、
下級審では、親族の成年後見人には適用されないとする判決が出されました。
今後の動向が注目されます。
もっとも、東京家庭裁判所の現在の運用では、
刑の免除規定の適用はあるとされていて、立法論の問題であるとされています。